メトロで恋して
キラッと光る脇のエピソードがとても印象的♪
主役のアントワーヌとクララを演じる俳優の地味な普段着感覚も良い。
三十路で独身でそれぞれに夢がある。でもその夢はまだまだ遠い。
都会で一人で夢を食べて生きていくのも三十路になると・・・しんどいときもあるよね。
ひとりっきりのアパートでは部屋の四隅から孤独が押し寄せてくるときも・・・あるよね。
ふっと人恋しくなったり、抱きとめてもらいたいなあと思うときも・・・あるよね。
役者志望ですでに若くもなく、明らかに髪も薄めになってきているアントワーヌは、時々カウンセリングを受けに行ったりしている。そのくせ、医者に言われたことに納得できず怒って出てきてしまう。
そんなアントワーヌが作家志望のクララと地下鉄で会って恋をする。
恋のはじめはみんな楽しい。ハッピー。
それに三十代の彼らはSEXも経験豊富な大人ですもの、なにをためらうことがある、っ肉体関係に進むのもはやい。
そこまではじつにトントントンといい感じの二人、しかし、だんだん男のほうが彼女にたいして独占欲と支配欲を出し始める。
クララのバイトや、好きな本にも当り散らす子供っぽくて我がままで困ったちゃんなアントワーヌ。
経済力もないのにクララを自分のものにしたいから男のほうは結婚しよう、子供もほしい、というわけ。
熱に浮かされてるのかと思えばそうでもなく案外現実的で、彼女にまずHIV検査を受けにいこうと言うのね。
そこがほら、10代のこどもじゃないから(^^;)
夢が現実に追いついてないくせに、妙に現実的だったりするのよね。
そしてふたりはHIVの検査を受けにいっしょに病院へ、するとなんとクララに陽性反応が出てしまう。
さてさて、ここからが大難問。
ただでさえ子供っぽい男がよ、彼女のHIV陽性反応の事実をどんなふうに受け止めるというのか? どういう態度に出るのか?
HIV陽性反応が出てきた段階で、今までみにたエイズの映画「フィラデルフィア」や「野生の夜に」や「夜になる前に」等々のように悲劇になっちゃうのかしらと不安になった。
でも、この映画はかつてのエイズの映画とは違ったわ。描き方がとても成熟した映画だった。ほっとした。
もちろん厳しいーものだけど、かつてのエイズ映画のような「エイズ=死」「涙」「感動」という描き方はしてないのね。
この映画ではエイズは恋人にとって愛の強度を試される踏み絵のようなものといえばいいのかな。
相手がHIV陽性だからといってむやみに恐れるべきではない。正しく付き合えば結婚生活だってできるだろうと前向き&現実的。
そこからどうするか。。というのが大問なのね~。
大人になりきれないアントワーヌのような男に、恋人がHIV陽性という難問をつきつけるところがなかなか厳しい~~。
アントワーヌとクララの物語だけど彼らの周囲の小さなエピソードの積み重ねがとっても印象深く味があるのね。
アントワーヌが父に会いに行きレストランで二人で話す場面、言葉少なにそれまでのぎこちない関係への思いを吐露する。そして父への、息子への、互いの愛はたしかにそこにあることを控えめに感じあうところや。。
アントワーヌの売れない役者仲間の若くもない女優に「抱いてほしいの」といわれて抱きしめてあげるところ。抱きしめてそれからキスをするけど、彼女はきゅうに帰ってしまうところや。。
胸がちくっとする。
孤独がしみる場面だ。人恋しさにせつなくなる場面だ。
「メトロで恋して」という明るいメジャーコードな題名がつけられているけれど、この映画、実際は夢の途上人である人の孤独を都会の隙間から拾い上げ繊細に丁寧に描いたものになっている。
そしてこの映画、アントワーヌとクララが窓越しに互いをみつめてエンディング。
でもエンディングが“はじまり”。
エイズのよって愛の強度を試された男が振出からまた愛をはじめる。
どうなっていくのかな・・・と、終わらないラストがしみる。
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