総括2006年映画館で観たベストな映画たち
今年は冒頭からアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」が話題になったことに代表されるように、ゲイを主人公にした映画が新しい段階に突入したなあ~って思える年だった。
エイズなんて存在しなかった80年代までと、エイズが暗い闇のように垂れ込めた90年代を経て、2006年の今年はまったく新たな段階に入った思える映画が次々公開された。
アメリカから「ブロークバック・マウンテン」であり、フランスから「僕を葬る」であり、台湾から「僕の恋、彼の秘密」であったり。
フランス映画、「僕を葬る」ではエイズではなくてガンで死んでいく。
その青年が自分の人生を振り返る、また家族との距離を考える、生きとし生けるものへの愛と、己の死をどのような形で迎えるべきかと考える。自然という大きな世界のなかでの自分のありようを見つめる。
オゾン監督の私小説的な個の追求がけっきょく普遍へと至る、美しい秀作だった。
台湾映画の「僕の恋、彼の秘密」もとても良い映画だったと思う。
当たり前に男が男を好きになり、恋の病にかかり、あまりにも初々しいので、つい観客も主人公の恋の応援団になってしまう。明るくあっけらかーんと、男同士の恋愛がなんのてらいも躊躇いもなく素直にまっすぐに綴られる。
可愛らしくキュートで好感度大なゲイの映画をぽーんと出した台湾映画のポップ感に脱帽させられた。
「ブロークバックマウンテン」では20年にも及ぶ男ふたりの愛と葛藤が深い人間ドラマとなって胸打たれた。
また、女装のゲイも国家や社会の激動と変容を受け止めてゆったりとたゆたう存在感を湛えていたのが印象深い「プルートで朝食を」。
これらの中から浮かび上がるのは、人それぞれの苦悩を抱え幸福を夢見て生きていく人間の本質的な姿であり、そんな人たちといっしょに手を携えて生きていきたいと強く思わせてくれるものだった。
ゲイではないが、男同士の関係に心揺すぶられたのは「メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬」。
男同士の約束を果たそうと、命がけで国境を越えて行く男の姿とメキシコ国境周辺の乾いた風景がいつまでもやきつく。素晴らしい映画。
監督をしたトミー・リー・ジョーンズの燻し銀の男くささと粗野な風貌の下に隠した繊細と知性にしびれた。
上半期は「クラッシュ」、「ミュンヘン」、 「グッドナイト・グッドラック」 「スタンド・アップ」 など社会派映画のなかにアメリカ映画の良心が光っていた。
また戦争映画「ジャーヘッド」「父親たちの星条旗」は時代を経てもなお学ばない人間への痛烈な批判が重く深く、そこで失われてゆく人の心と人の命に日々自覚的でありたいと思わされた。
それらはいかにもアメリカ映画らしい社会派ドラマで、どれもが娯楽作品の面白さと社会的なテーマ性を兼ね備えていた。
またイギリス発の社会派ドラマで風格があった「ナイロビの蜂」。
単館系ではドイツ&トルコの「愛より強く」、中国&チベットの「ココシリ」が記憶にやきつく。
「愛より強く」の主演のピロル・ユーネル、次回作が待ち遠しいお気に入り俳優になった。
「ココシリ」のチュー・ユー・アン監督からは中国映画の新しい風を強烈に感じさせられた。
チュー・ユー・アン監督の前作「ミッシング・ガン」も思わずDVDを購入。最近の監督のなかではいちばんの期待の星になってしまった。
心に深くじんわりとしみて忘れがたいのは単館系の映画に多いのは毎年のこと。
イタリア映画の「家の鍵」 「13歳の夏に僕は生まれた」 ドイツ映画「白バラの祈り」、ロシア映画「太陽」、フランス映画「真夜中のピアニスト」
そしてスペイン語圏の映画からも傑作が。エルサルバドルの映画「イノセントヴォイス~12歳の戦場」、エクアドルの映画「タブロイド」。
韓国映画で「クライングフィスト」。
映像美では「ブラックダリア」と「上海の伯爵夫人」に酔いしれる。
ストーリーテリングの上手さではウッディ・アレン監督の「マッチ・ポイント」がダントツ。
ウッディ・アレンの作品は自分ひとりで楽しむときめていたけど、この映画だけは誰にでもおすすめできる。
子どもと動物の映画では「夢駆ける馬ドリーマー」は小粒だけどとても良質。友人に言われて観にいって見逃さなくてほんとうによかったと思えた映画。
日本映画ではなんといっても「フラガール」のすこぶるつきの面白さに歓喜零涙。制作会社としてのシネカノンの存在感は増すばかり。
女流監督が目立ちました~
西川美和監督の「ゆれる」も大きな収穫。
西川監督、この完成度はすごすぎる。今後を楽しみに見続けたい若手監督の筆頭になってしまった。
それから「かもめ食堂」、「バーバー吉野」の個性がますます磨かれて・・とても楽しみです。
それから「男たちの大和」は見事なバランス感覚で庶民の立場からの戦争を描いて深かった。反戦のメッセージ性とエンターティメントの部分が見事なほどに絡まりあい、とても良質だったと思う。
あと、今年忘れられない大収穫はダニエル・クレイグ(*^^*)
というか「007」の品種改良ぶり。
ダニエル・クレイグは今年映画館でもっとも多く作品を観た俳優で、「Jの悲劇」に始まり、「ミュンヘン」 「レイヤーケーキ」そして「007カジノロワイヤル」と、一年間に4本も出会えてしまった。
この一年、映画館で再会するたびにどんどんセクシーになっていく。
それにしても素晴らしいボンドになるまでのボンド、次回へと世界中の期待を繋げる見事な演じっぷりにこの人の実力のほどがつくづく感じられた。
次点として韓国映画「王の男」、ミュージカル映画「プロデューサーズ」。
娯楽映画ってこうでなくちゃという王道映画だった。
淀川長冶さんが生きていらしたらこの2本の映画のご紹介をあの語りで、ぜひぜひ聞いてみたかった。
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コメント
たくさんの情報とすばらしい文筆でとても参考になりました。いろいろな国の映画があるんですねー
投稿: NAKA | 2006年12月27日 (水) 12時23分
bettyさん、こんにちは~。
今年もたくさんの映画が、上映されたんですねぇ~。
bettyさんの今年の総括を読んで、ウンウンと頷いたり、観ればよかったぁ~!しまった!と後悔の念に駆られたりしています(笑)
私が観た今年の映画BESTは・・・。
考え中です。(考えてるちゅ~事は、コレだというのが無かったんかい!と突っ込まないでネ)
良い映画がたくさんあったという事で。
ポリポリ (・・*)ゞ
投稿: ちゃろ | 2006年12月27日 (水) 16時36分
>NAKAさん
はじめまして~♪
いろんな映画がありますよね~。そこから10本とか一位から10位までとか順位もつけられなくて・・。
映画ってどこかここかいいところがあるのでどれも嫌いになれないっていうか。
映画に関しては八方美人です。
文章はアバウトですけど、また遊びにいらしてくださいませ~。
>ちゃろさん
何がよかったですか?
DVD観賞のほうにも良いものがあったでしょう?
ちゃろさんから教えてもらったものにも面白いものがありましたよ~。
「貴公子たち~」とか「アブドラジャン」とかいろいろ。
来年も情報交換お願いしますね(ぺこ)
投稿: betty | 2006年12月27日 (水) 23時03分
bettyさ~ん、こちらこそ、来年もムフフな映画やオホホな映画の
情報を、よろしくお願いします。
アイヤ~、映画のBESTですが、去年観たのか今年観たのか
定かじゃない映画が多くて、それでちょっとアタフタしてます。
なんせ冬季オリンピックって今年だったっけ?状態ですからぁ~。
投稿: ちゃろ | 2006年12月28日 (木) 16時57分
コメント頂きありがとうございます。
八方美人とおっしゃいますが、とてもいいことだと思います。
私事で申し訳ないのですが、先日もレンタルショップで散々迷って何も借りずに帰ってきました。
優柔不断→映画のいいところを見つける。
勉強になります。
投稿: NAKA | 2006年12月28日 (木) 17時40分
ちゃろさん
オリンピック、いつだったかな?!って、よくありますよ。
最近ではそれにサッカーW杯やらなにやら、盛りだくさんなのでこんがらがってきますよね。
観た映画、今年2月にブログをはじめるまでは、観っぱなしだったので何をいつ頃みたのか忘れていくいっぽうだったの。
でもブログに良かったものは書いておくから忘れなくなりました~。
>NAKAさん
ホームページやブログも、TBをはってくださったところを観にいって、いろんな発見や驚きをもらってます。
映画もブログもいい栄養になってます。
NAKAさんのところも話題が豊富で発見がありますね~。
投稿: betty | 2006年12月29日 (金) 23時49分
bettyさん!こんにちわ!
「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は男臭い映画でしたねぇ。あそこに描かれていた関係は、単なる友情を超えていたと思いました。トミーがいい表情をしていた。ほんとに素晴らしい映画でした。
「クラッシュ」「スタンドアップ」も好きな作品です。アメリカの良心ね。アメリカの社会派映画は見応えあるよなぁ。アメリカ映画は昔からこの手の映画にかけては巧い。それでいて、シリアスな問題提起の中に人間の美しさや勇気がささやかな希望のように光らせ、いつまでも胸を打ち続けます。いやぁ、良かった。
個人的には「ホテル・ルワンダ」も好きなんです。「目を見開いてこの残酷な現実を凝視しろ」と言われているようで平和ボケの日本人には目の覚めるような社会派映画でした。まさにbettyさんの仰るような、人の命に自覚させられる内容でした。命が何でもない物のように奪われていく狂った状況では、人の心は果たして正常でいられるのかととても怖くなりました。戦場もそうですが、人が殺されるのを見るのは異常だ。命の尊厳を深く考えさせられる作品でした。
僕が2006年ベスト10ムービー、ちょっと覗いてみてくださいね。TBしときました。
ではでは!
投稿: shit_head | 2006年12月30日 (土) 12時11分
bettyさん 今年もお世話になりました。
私の今年のベスト男優はこんな面々です。
チョン・ウソン、ダニエル・クレイグ、ロマン・デュリス、メルビル・プポー、
来年もいい男観賞でお世話になりますのでbettyさんよろしくお願いします。良いお年を~♪
投稿: ジミーガール | 2006年12月31日 (日) 01時50分
私の2006年のツボ人は「ココシリ」の隊長と(名前がわかりませんっ)ダニエル・クレイグかしら。
来年もいっぱい映画みたい!
投稿: Mire | 2006年12月31日 (日) 15時11分
突然で申しわけありません。現在2006年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.mirai.ne.jp/~abc/movieawards/kontents/index.htmlです。
投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2007年1月 1日 (月) 13時34分
bettyさん
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
ベティさんのベスト興味深く拝見しました。
やはりベティさんもEUの作品が多いですね~(*^_^*)
私も「ぼくを葬る」はベストに入りました。
もちろん「愛より強く」も入ってます。
ユーネルは次回作がガトリフなので本当に私も待ち遠しいです。
「クラッシュ」「メルキアデス~」も良かったし、
邦画もいい作品たくさんありましたよね~
「ゆれる」は私もヤラレました。
2006年は豊作だったなーって思います。
今年もこの調子で豊作だといいなーって思います。
今年も映画の話題で盛り上がりましょう。
宜しくお願いします。
2006年のベストTBさせて頂きました。♪
投稿: Chocolate | 2007年1月 1日 (月) 21時45分
>shit-headさん
あけましておめでとうございます。
「メルキアデス・エストラーダ」、男くさい詩情が溢れ、ほんとうに好きな映画でした~
今年も映画も映画以外のことでも沢山の感動に出会いたいものです。
shit-headさんのベスト10からも刺激をいただきましたよ~。
今年もよろしくお願いします。
>ジミーガールさん
プポーくんにウソン氏・・と、ジミーガールさんのせつない病の病原菌ですね~。
魅力的な病原菌ばかり、今年はどんなせつない君に出会えるんでしょう・・、私もいっしょに楽しみたいと思いますので、よろしくお願いします。
>Mireさん
ココシリの隊長、かっこよかったですよねえ~。映画も素晴らしくて、去年のベストワンは「ココシリ」か「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」かっていうぐらいです。
>chocolateさん
お気に入りがけっこう重なりましたね!
今年もいっぱいいっぱい頼りにしてます。今年もどうぞよろしくお願いしますね~♪
投稿: betty | 2007年1月 2日 (火) 12時53分
bettyさん
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
全世界の洋画を良くご覧になっていますね。ホントに映画通なんですね。感心しました。
投稿: ケント | 2007年1月 5日 (金) 22時50分
あけましておめでとうございます。
こうやって解説付きで紹介されると、それぞれ思い出してしまいますね~
俺なんて単なる羅列だったし、来年はちょっと考えます・・・
投稿: kossy | 2007年1月 6日 (土) 10時50分
>ケントさん
いえいえ、映画通なんてまだまだですよ~。好きなだけで。。
でも、好きな映画観てると気持ちがふっくらして、なんとなく豊かになった気分がするんです~(笑)
映画っていいですよねえ~♪
>kossyさん
私はKossyさんはじめよそ様のブログを観ては感心しっぱなしです。来年はどんなふうにまとめようかと、今から楽しみです。て、一年が始まったばかりなのに(笑)
投稿: betty | 2007年1月 6日 (土) 23時51分
トラバにコメント、どうもですっ。
2006年は、クリント・イーストウッドにやられたぁ・・・という感じでしたね。
硫黄島二部作を作っちゃうし・・・、
そのおかげで、地上波テレビで彼の特集組んでて、
「白い肌~」を見れたんですよ。
タイトルがエロいけど、
ちょっと怖さが勝ってる・・作品。
是非ご覧あれぇ。
投稿: ひらりん | 2007年2月 2日 (金) 00時46分