苺とチョコレート
私が将来おばあさんになって死ぬときに、胸のなかで“生涯の好きな映画のベストなんとか”を数え上げるとしたら、絶対にランクインさせる映画です。
一つ一つの小道具にまで意味がある、とっても丹念に撮られた映画です。
どこかほのぼのしていて垢抜けている。だけどしっかりキューバ社会を突いている。
と、同時にこの映画の人に寄せる最終的な信頼が気持ちいい。
共産主義こちこちの大学生のダビド・・・・・恋人が他の男と結婚するのを見届けて落ち込んだ帰り道、チョコレートアイスクリームを食べている。
そこへやってきたゲイのディエゴは苺を食べる・・・・ディエゴは以前に体制批判をしたことで現在、監視下におかれている。
苺は女の食べ物、それを食べる男はオカマ、とみなされるキューバでやっぱり苺を食べてたディエゴはオカマなわけだけど。
さてさて、
ダビドはオカマは人間の屑だと思っているのにディエゴのほうはダビドに一目ぼれ。
あらら、
こりゃあ前途多難だわ。
だって、オカマ嫌いな共産主義者と、共産主義嫌いのオカマだもんね。
でもねディエゴがダビドを部屋に誘うの、ちょっぴり嘘ついて。
その部屋のなんて素敵なことかしら。
キューバといったら欠かせないはずのカストロ議長の肖像も、ゲバラの肖像もないかわりに、壁にかかっているのはキューバを去った作家や音楽家の絵だったり。
床には友人の彫刻家が作ったキリスト像、棚にはさまざまな本。
禁止されてる資本主義国製のお酒を飲んで、マリア・カラスのレコードを流す。
そのような行為のひとつひとつが体制批判、プロパガンダとみなされるんだけどね。
ディエゴは“プロパガンダ”ではない、“芸術の自由”だって言うの。
おおいに賛成! 私も一票。
芸術の自由はなにものもそれを禁じることはできないと私も思っているから。
その一言にものすごい価値がある映画だと思う。
だからこの映画のディエゴにはいっぱいいっぱい共感できるんです。
ディエゴ役のホルヘ・ペルゴリアには脱帽よ。素晴らしい演技です。
ダビドにわざとコーヒーをかけてシャツを脱がせて体をみてドキドキしたりするところとか、と~~~っても表情豊か。
いっぽう、ゲイを人間の屑だといっていたダビドがだんだん変わっていくようになるのね。それが自然で筋運びも芝居もうまい。
すこしづつディエゴと友情で結ばれていく変化にはじわっとくるなあ。
面食らってしまったのは、共産主義のキューバでこんなこ台詞がどうどうと出てきたことかな。
「この国は崩れかけている」・・、とディエゴが言うところ。
そのディエゴの視線の先にはキューバ革命によって破壊された建物が映し出されるの。
「財政難で修繕もできない、崩壊するのを待っている」というような台詞も続く。
共産主義国なのに映画のなかで堂々と体制批判をやってることにビックリしちゃった。
これ、カストロも認めたということでしょう(?)すごい。
そして・・・、美しいキューバの海と空と音楽。
愛すべきダビドとディエゴの国・・・
その国を追われる日、ダビドとディエゴの別れの寂しさよりも、どこに行っても切れないだろう彼らの絆の深さがしみてきた。
人間を最終的に信じているこの映画の姿勢が懐深くて好き。珠玉。
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『苺とチョコレート (Fresa Y Chocolate)』(1993 キューバ・メキシコ・スペイン)
キューバ映画界のみならず、ラテンアメリカ映画界を代表する巨匠トマス・グティエス・アレア監督が贈る人間賛歌。恋人に結婚され落ち込んでいた共産主義者の大学生ダビドは一人チョコレート・アイスクリームを食べていた。そこでイチゴのアイスクリームを食べるホモ・セクシュアリストの芸術家ディエゴと知り合った... [続きを読む]
受信: 2006/05/04 17:50:59


コメント
bettyさんの文章の上手いこと!bettyさんの文章を読むとつい見たくなってしう。何処でこんな映画見つけてくるんですか?
投稿 taba | 2006/04/20 7:20:49
うんうん。この映画、私も好きです。『カーテンコール』とかは、どんな感想をもたれたのか、是非お聞きしたいです。リクエスト!!
投稿 さち | 2006/04/20 20:29:27
tabaさん
この映画はもしかしたら品揃えがいまいちのレンタルショップにはないかもしれません。ミニシアター系、非ハリウッド系が充実してるところにはあるんでしょうねえ。
さちさん
「カーテンコール」、おお~「カーテンコール」。好きな映画ですう。
当時は観てなくて「ベント」もリアルタイムで観てなくて、ポール・ベタニーつながりで「ベント」観てから、脚本家つながりでこの映画を観たんでした。
「ベント」を書いた人と同じ人が書いてると思えなかったですよ~。
カップルの風貌の落差もかえってよかったし、音楽も映像もとってもよくて、去年、バレエにもはまってたので、この映画を見直してみなくちゃとずーーっと思ってました。
これを機会に見直して、感想をUPしたいと思います。
まだらボケで思い出さないのもあるし、
いいもので観てないものもたくさんあるのでまた教えてくださいねえ~。
投稿 betty | 2006/04/20 21:37:53
おはようございます。
私もこの映画好きです。
同じ監督の「バスを待ちながら」も
大好きな作品の1つです。(^.^)
投稿 chocolate | 2006/04/21 9:07:16
Chocolateさんもお好きですか。
「バスを待ちながら」、未見なんです。一度探したことがあったんですがDVDは作られてなかったのかな。
最近ならDVD化されたかもね。
また探してみます。
投稿 betty | 2006/04/21 9:42:51
こんばんは。『ベント』どんな映画なのでしょう。観てみたいです。
今度レンタル屋で探してみねば。
投稿 さち | 2006/04/21 18:43:33
さちさん
「ベント」はビデオの題が「ベント~堕ちた饗宴」になってると思います。
イギリス映画なんです。
ナチの収容所におくられたゲイのふたりの男がそこでいっしょに労働するうちにだんだん惹かれあっていくんです。
でも収容所なので肉体の接触はできない、そこで二人は労働時間の合間の休憩中などに、並んで立ったまま、言葉で愛しあうんです。言葉だけで。
悲しい映画です。
そうそう、冒頭シーンでミック・ジャガーが女装で歌うところ、良かったです。
男だけの妖しい踊りとか。(ベルリンのそれ系の店)。
投稿 betty | 2006/04/21 21:54:52
ありがとうございます。
投稿 さち | 2006/04/23 3:25:52
いや~後を引くいい映画でした。
ナンシーがダビドの事が好きだとわかったディエゴが、さり気なく2人が結ばれるように配慮したところ、胸が痛くなりましたよ。
だって、ディエゴだってダビドの事が好きなんだから~。
自分の愛している人が何時でもハッピーで居られる様にしてあげれる事、それが「愛する」という事なのでしょうか。
ところで、ディエゴ・・・京都祇園のハッピ着ていましたね(笑)
投稿 ちゃろ | 2006/04/24 17:59:27
ディエゴ、いい人ですよね~。
ディエゴ、大好き。
ハッピ、着てました、着てました。どこから手に入れたんでしょうね。
彼は国や人種や宗教などにすこしも壁をたてない人ですよね。
彼の宗教は芸術と美なのかな。
ディエゴのような友達がいたらなあ~~。憧れます。
投稿 betty | 2006/04/24 18:23:16
bettyさ~ん、私から見たらbettyさんがディエゴのような方だと思いますよん。
ここへ集うみなさんは、bettyさんからいろ~んなラブパワーをもらっているんじゃないかしら。
だからディエゴ的なお友達はもちろん、ちょっと真面目?なダビド君的お友達も如何でしょうかぁ(笑)
投稿 ちゃろ | 2006/04/25 17:34:16
ちょっと、ちゃろさん
それは言いすぎ。
褒められるの苦手~。ひゃ~。
もう褒めないで。
私は皆さんのレスによって元気もらってますよ~~。
ちょっと真面目なダビドくん・・すぐに不良にしてしまいそうな予感~(^^;)
投稿 betty | 2006/04/25 19:45:26
はじめまして。TB失礼致します。こちらの映画私も見ました。ディエゴとダビドは最期にはかた~く抱き合っていて・・・よかったですよね。私の記事には書いてませんがハッピ着てるの私もすんごい気になっていました。
それもかなりセクシーに着こなしてました。
ディエゴったら・・・(笑)今後ともどぞよろしく・・・
投稿 konakonashiro | 2006/05/04 18:01:43
konakonashiro さん
はじめまして。
TBありがとうございました。私も3つもTBさせていただきました~
ディエゴ、けっこう胸毛が濃いんですよね~~。ものすごくダビドのことが好きで、でもダビドはそのけがないし・・・その温度差はなんとなく可笑しいと同時に、せつなくてねえ~~。
今後もよろしくお願いしま~す。
投稿 betty | 2006/05/04 18:57:18